2012年7月1日日曜日

ある23枚のスチール

マタンゴを演出中の本多猪四郎監督

僕の交友関係は大きく3つ。「本業のゲーム関係」「モデラー関係」そして「サブカルチャー関係」です。そのサブカル関係の交流会の一つに「聖会」があります。聖会は宇宙船の構成者として知られる聖咲奇氏を囲む集まりで、何てことはない大阪のマニアが集まって他愛もない話題で2〜3時間ばかり盛り上がるとそれだけの会です。ただし、集まるメンバーは関西でも特濃のマニアたちでありまして、私など聖会に行く度に「ああ…この人達に比べると自分はボルビックかエビアンかというくらいに薄い人間だな」と自分のまともさに安心するのであります。


さて、先月はその聖会大阪分会(東京の聖さん抜きで大阪メンバーのみでの集まり)で、こんな物を入手いたしました。



そう、昭和特撮映画の名作「マタンゴ」のスチール23枚です。私はそこまで特撮マニアでは無いという事もあるとは思いますが、これだけの数のマタンゴのスチールはちょっと見たことがありません。


これを聖会当日に持参されたのは、ファンゴリア日本版の元編集長としても知られる日本のモンスター研究の第一人者石田一さん。詳しくは聞いてないんですが、記事を書く上で入手されたもののようです。「みんなで好きなの持って行きなよ」と言われたものの、バラバラでも貰っても逆に価値が無いものですし、みんなで相談して私の方でお預かりした次第。特撮書籍は数多くありますけど、これだけ一度にマタンゴのスチールが集まる事は無いでしょうね。眼福でありました。あ、もちろんこれらは原盤ではありませんよ。

劇中ではわかりにくいマタンゴのディテールが確認できる。

これらのスチールを見ていて思い出すのが、談話室オヤカタ池田憲章さんが語った特撮研究家竹内博さんの思い出です。竹内博さんは版権元から借りたポジフィルムを私費を投じてデュープ(フィルムの複製)していたそうです。デュープ代も安くありませんから、大変な出費だったのではないでしょうか。憲章さんが竹内さんになぜデュープを取るのかと聞くと、こういったフィルムの管理は甘くこの先紛失してしまう可能性があるからだ…と答えたそうです。マンガの原稿ですら紛失事件は後をたたないくらいですから、出版社に貸し出すうちに原盤が紛失なんて事は多いのでしょう。かつて円谷プロに在籍していた事もある竹内さんだけに説得力のある言葉です。

もちろん失われていくのはスチール写真だけでは無く、場所を取るミニチュアやヌイグルミだって同じ事なのは言うまでもありません。そんな失われていく昭和特撮という文化遺産を残そうと、今月から素晴らしい美術展が開催されます。


庵野秀明監督による特撮博物館。7月10日より東京都現代博物館にて開催。



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